かがやき司法書士・行政書士事務所

管理費滞納

管理費滞納

マンションの滞納管理費等の回収

分譲マンションにお住まいの場合、何年かに一度の割合で理事等の役員に就任しなければならないと思います。当該マンションにおいて特にトラブルがなければ良いのですが、中には管理費や修繕積立金等の支払いを滞納している方がいらっしゃることがあります。滞納があった場合に早期に対処していれば滞納額が多額にならずに済んだケースも、対処が遅れることで気付いたら何十万円、何百万円という多額になるケースもあります。

理事等の役員といえども同じ住人です。ご自身のお住まいの隣人が滞納している場合、今後の人間関係や隣人関係を考えるとなかなか滞納分について請求するのも気が引けることもあろうかと思いますが、中にはそれを逆手にとって、払える資力があるにもかかわらずのらりくらりと交わして管理費等を支払わない方がいらっしゃるのも事実です。

そのような滞納されている管理費等の回収について、弁護士等の専門家にご依頼されると比較的早期に解決できる場合があります。なぜなら、弁護士等の請求を無視し続けると最終的には当該マンションを追い出されることになってしまい住むところがなくなってしまうためです。しかし、弁護士さんにご依頼される場合、着手金だけで10万円程度かかるため、ご依頼されることを躊躇されることも多いかと思います。


【 債権回収の方法 】

管理費等の回収には訴訟等の裁判手続だけではなく様々な方法があります。訴訟手続まで進んでしまうと費用も時間もかかりますし、上記の通り今後も同じマンションに居住していかれることを考え、できる限り裁判手続以外の方法で回収していきます。

1)内容証明郵便での督促による回収
内容証明郵便自体には何ら強制力はありませんが、内容証明郵便を送付することにより、本気で回収するという姿勢を相手に知らせることができます。特に弁護士や司法書士など専門家の名前が入っている場合、相手に心理的なプレッシャーを与えることができ、内容証明郵便の送付のみで回収できるケースも多くあります。

2)交渉による回収
内容証明郵便の送付によってすぐに全額の回収ができないまでも、相手としては分割でなら支払えるという場合もあります。このような場合に、支払内容を交渉で詰めて示談によって回収を図ることがあります。また、場合によっては示談書を公正証書で作成することにより、万が一相手が支払いを怠った場合には訴訟をすることなく強制執行をして回収することもできます。

3)裁判手続によって回収する
上記いずれの方法によっても回収できない場合には、支払督促、少額訴訟、通常訴訟等の訴訟手続を駆使して回収することとなります。また、判決を取得しても支払わない場合は強制執行まで行います。

4)賃貸に出している場合は、その賃料を押さえることで回収する
管理費を滞納されている方が、当該部屋を第三者に貸している場合、その家賃を差し押さえることで回収することができます。通常、差押え(強制執行)をする場合は、その前提として、裁判手続を経ていなければなりませんが、管理費等の場合は区分所有法7条の先取特権に基づき、裁判手続を経ていないくても差押えをすることができます。

5)区分所有法7条による競売
滞納管理費等の金額が大きい場合やそもそも相手が行方不明の場合には、そのマンションを競売によって売却し、その代金から回収することができます。
ただし、マンションに住宅ローンの担保として抵当権が設定されている場合、その住宅ローンが全額回収できた残り分しか回収できません。特に、行方不明になっている場合には、おそらく住宅ローンを滞納しているケースが多いと思いますので、現実的に回収できるかどうか難しいところです。さらに、競売の申立をするために数十万円の予納金を納める必要がありますので、この点からも使い勝手の良い制度では無いと思います。
ただし、予納金等の実費について優先的に回収できます。

6)区分所有法59条による競売
管理費等の滞納がマンションの共同の利益に著しく反する行為として、その所有者を追い出す手段として競売を申し立てることができます。
この手続は上記の7条の手続と異なり、所有者を追い出すことを目的とするための競売であるため、競売の代金から管理費を回収することはできません。しかし、滞納管理費等は新所有者に引き継がれることとなりますので、改めて新所有者に請求して支払ってもらうこととなります。新所有者は、滞納管理費があることを知った上で落札しておりますので、支払ってくれる可能性はかなり高いと思います。
さらに、この競売を行うためには、マンションの全所有者の75%以上の同意が必要であり、加えて、競売を行う前提として競売をしても良いという判決が必要となります。そして、競売の申立をするためには数十万円の予納金を納める必要がありますので、7条同様、この点からも使い勝手の良い制度では無いと思います。


【 債権回収を行う前の確認事項 】

1)消滅時効
管理費等の滞納が発生してから5年間経過していると、消滅時効となってしまい、管理費等が請求できなくなる場合があります。時効が迫っている場合、一定の手続を踏むことでその時効を中断することができます。

●債務承認
ある程度時間に余裕がある場合は、交渉を行い、相手方に負債の存在を認めてもらうような合意書や示談書を作成すれば「債務承認」として時効を中断することができます。

●訴訟の提起
相手方が話し合いに応じない場合には、訴訟を提起することで時効を中断させることができます。

●催告
訴訟をするためにはある程度の時間が必要であり、あと数日で時効になるというような場合には訴訟をするのも間に合わないような場合があります。その場合は、とりあえず「催告」として内容証明郵便等で請求をしておけば、その日から6か月以内に訴訟をすることによって時効を中断させることができます。

2)相手の資力
任意に支払ってもらえない場合は、最終的には強制執行によって回収することとなりますが、強制執行は強制的に財産を差し押さえて回収する手続であって裁判所が立て替えてくれる訳ではありません。したがって、相手方にまったく財産がない場合はいくら判決を取っても回収できないこともあります。事前の財産調査は極めて重要となります。
管理費等の滞納ですので、当該マンション自体を財産として所有していることは間違いありませんが、通常は、住宅ローンの担保として金融機関の抵当権が設定されていることが多分にあります。そうすると、マンション自体はあまり当てになりません。しかし、多くの方がお勤めをされている方だと思いますので、勤務先がわかれば給料を差し押さえることで回収は可能だと思います。
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